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[A-Z]

A型肝炎 (hepatitis A:えいがたかんえん)

いわゆる流行性肝炎で、A型肝炎ウイルス(エンテロウイルス72)によって起こる。
潜伏期は15〜45日で、経口感染する。
急激に発症し、38℃ぐらいの熱が続き、全身倦怠感、食欲不振、吐き気、嘔吐、黄疸などの症状が出る。特徴として、秋から冬にかけて多く発生する。

→ウィルス性肝炎

B型肝炎 (hepatitis B:びーがたかんえん)

B型肝炎ウィルスが原因となって起こり、潜伏期は50〜180日。
血液を介して感染し、昔は輸血による感染が多かったが、現在では輸血の検査も行き届き、この経路での感染は少なくなっている。むしろ、医療従事者がB型肝炎患者の血液に誤って触れてしまうという医療事故(針刺し事故だと感染率50%ほど)が問題となっている。ほかにも母子感染(垂直感染)がある。

一般に、発症はゆるやかで、発熱もほとんどなく、食欲不振や疲労感、吐き気嘔吐、黄疸などの症状がある。ときとして発疹、関節炎、糸球体腎炎等を起こす。また、B型肝炎は慢性化しやすく、肝硬変から肝臓がんに進行する可能性がある。

現在ではワクチンが開発されていて、B型肝炎の母子感染率は急激に低下してきている。(出産の際に、産まれた子供にワクチンの接種を行う)

→ウィルス性肝炎

C型肝炎 (hepatitis C:しーがたかんえん)

A型肝炎でもB型肝炎でもない、非A非B型肝炎の90%以上を占めると言われている血清肝炎の一種。
原因はC型肝炎ウイルス(HCV)で、日本人の約2%がHCVを保有していると考えられている。C型急性肝炎の50%以上が慢性化し、日本には90万人以上の患者がいると推定されている。
特徴としては慢性化しやすく、肝硬変、肝がんに移行しやすい。肝がんの60%がC型肝炎によるものといわれている。

→ウィルス性肝炎

d (Dalton:ダルトン)

染色体やリボソーム、ミトコンドリア等の質量を表す単位

ダルトン
Da (Dalton:ダルトン)
染色体やリボソーム、ミトコンドリア等の質量を表す単位

ダルトン

F'菌 (F prime:エフダッシュきん)

Hfrが再びF+菌になったときに、F-DNAにchDNA(宿主のDNA)が混じったものが生じることがある。そうすると宿主の方は本来の機能を失った染色体ができ、変異体が生じる。また、F-DNAも本来持っていたものではない情報が混ざり込む。この F’が他のF-菌に組み込まれることにより、本来はない形質が組み込まれたりする。

Hfr
Fプラスミド (F plasmid:エフプラスミド)
F因子(伴性遺伝子)のこと。
F因子の項を参照

プラスミドF因子
F因子 (F factor:エフいんし)
Fプラスミド(F plasmid)とも呼ばれる。
2本鎖の環状DNA(DSDNA)で、1つの細菌細胞に数個あり、菌のDNAとは独立して存在し、増殖する。
構成しているのはF-DNAで、重さは6×107
F-DNAの第1領域には rep(F因子の自己増殖に必要な遺伝子)
       第2領域には tra A-G(接合に必要な、F線毛の構造遺伝子)
       第3領域には IS(DNAの組換えに必要な領域) がある。

F因子を持っている菌を F+菌(エフプラス菌):雄性菌
F因子を持っていない菌を F−菌(エフマイナス菌):雌性菌 という。
接合の際に、F線毛を介してF+菌からF-菌に F-DNAがうつる。

接合FプラスミドHfr線毛/繊毛

Hfr (High frequency recombination:エイチエフアール)

F因子が宿主細胞の染色体DNAの中に組み込まれたもの。
10分の1〜100分の1の高い確率で遺伝子組換えが起こる。
(普通は、10000分の1ぐらい)

F'菌F因子

lipid A (lipid A:リピドA)

グラム陰性菌の細胞外膜に存在するリポ多糖(LPS)の構成成分の一つであり、リポ多糖の内毒素作用の主な部分は lipid A によって引き起こされる。
lipid A は2分子のグルコサミン、2分子のリン酸、6分子の脂肪酸から成り立っている。

菌種によって異なるが、ほとんどは飽和脂肪酸で、3-ヒドロキシ脂肪酸が多い。また、普通の脂質とは異なり、β(1→6)結合した2分子のグルコサミン残基に、リン酸と脂肪酸が結合したものである。

グラム陰性菌リポ多糖O抗原グラム陰性菌の細胞壁コア多糖
LPS (lipopolysaccharide:エルピーエス)
リポ多糖の略称

グラム陰性菌リポ多糖O抗原

MRSA感染症 (infection with MRSA:エムアールエスエイかんせんしょう)

ペニシリン系抗生物質の一種であるメチシリンが効かなくなった黄色ブドウ球菌による感染症のこと(メチシリン自体は大抵の菌が耐性化してしまったため、現在では使われていない)。MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、Methicillin-resistant Staphylococcus aureus)は多くの抗生物質に耐性を示し、感染すると治療は困難。
MRSAは健康な人にも生息していて、普通は特になにも症状を引き起こさないが、抗生物質を長期間にわたって使用していると増加してくる。特に免疫能が衰えた状態の人や老人に感染すると呼吸器感染症(咳とか)、腸炎、敗血症、ショック症状等を引き起こし、致命率も高いので注意が必要である。また、治療は難しく、特殊な抗生物質を用いる場合が多い。
MRSAは院内感染の代表として挙げられる。

院内感染、 MRSA

O抗原 (O antigen:オーこうげん)

いわゆる菌体抗原で、構造的にはグラム陰性菌の細胞壁表面のLPS(リポ多糖)の最外層に位置するO抗原側鎖(O antigen side chain)によって抗原特異性が決まっている。O抗原側鎖は繰り返し構造を持った多糖体で、それを構成する単糖の種類、配列、結合様式によって抗原性が決まる。
このように、O-側鎖は菌の血清学的特異性を支配していることから、O-抗原と呼ばれている。

O抗原は、グラム陰性菌を90℃、45%フェノールで90分間処理すると水層にLPSが出てくる。これをさらに弱酸で処理すると、lipid Aと多糖に分解する。

lipid ALPSグラム陰性菌R型菌S型菌グラム陰性菌の細胞壁リポ多糖

Rプラスミド (R plasmid:アールプラスミド)

(薬剤)耐性因子のこと。
1959年に、秋葉らが Shigella dysenteriae、Shigellaで、クロラムフェニコール(CP)、テトラサイクリン(TC)、ストレプトマイシン(SM)、サルファ剤(SA)に強い耐性を示すものを発見し、その耐性は赤痢菌から赤痢菌へ移ることを発見した。そして、それはプラスミドによるものだった。

大腸菌(E. coli)では、R-plasmid は、3〜120×106d 、2本鎖の環状DNA、宿主の染色体DNAの0.1〜6%の大きさ。 大きすぎるので、形質転換はできない。(大きいので受容細胞に入れないから)

1) 30×106d 以下の小さなプラスミドを染色体1つ(1つの菌)に対して多数存在。
増殖は緩やか。自立性増殖(relaxed)
2) 30×106d 以上、1細胞(1つの菌)に1〜2個しかない。
厳しく複製の制限を受け、ほとんど増えない。(stringent)

1) と2)はプラスミドに共通。
小型のプラスミドは、接合による伝達の遺伝子群を持っていないが、大型のプラスミドと共存すると、tra遺伝子が作る性線毛を介して両者とも伝達できる。
薬剤耐性のみのRプラスミド(欠損R)+F因子→可動化する。

1つの細胞内に異種のプラスミドは共存できるが、同種のものは、一方が排除される。

染色体DNAに自然突然変異が起こった結果、ある薬剤への耐性を獲得することはあるが、多剤耐性が起こることは滅多にない。→R-plasmidのしわざ

グラム陽性菌と陰性菌でRプラスミドを持っている割合は、20%〜70%
グラム陰性桿菌では、分類学上の属、科を越えてRプラスミドが伝達される。
特に、E. coli、Shigella、Salmonella、Klebsiella とグラム陰性腸内細菌との間で多剤耐性がよく起こる。

Rプラスミドは種類によって、安定に存続する菌種と脱落してしまう菌種がある。
Vibrio cholerae … Rプラスミドが入っても脱落してしまうので、耐性菌はほとんど居ない。
Staphylococcus aureus、Streptococcus pyogenes、Diplococcus pneumoniaeなどのグラム陽性菌の耐性菌は60%以上で、全てが多剤耐性。→Rプラスミドの感染を受けている。

黄色ブドウ球菌 … PC、SA、SM、TC の2〜4剤耐性
A群連鎖球菌  … TC、PC、マクロライド系抗生物質の2〜3剤耐性

グラム陰性菌 … Rプラスミドは自己伝達性を持っている性線毛の形成に関与する接合誘導遺伝子群:traをもっている。
グラム陽性菌 … traをもっていないため、phageを介してRプラスミドを伝達する。

Rプラスミドの多剤耐性の種類
・SA,CP,TC
・βラクタム系抗生物質(PC、セファム系)
・アミノ配糖体(SM、カナマイシン、ゲンタマイシン)
・マクロライド系(EM、オレアンドマイシン、エリスロマイシン)
・ニトロフェナン類
・重金属(Hg、Co、Ni、Cd)

プラスミドR因子
R因子 (R factor:アールいんし)
Rプラスミドの項を参照

線毛/繊毛Rプラスミド
R型菌 (rough form bacteria:あーるがたきん)
寒天培地上で、腸内細菌のS型コロニー(集落)が変異すると、R型になり、病原菌の場合は、その毒性が弱くなる。また、溶菌しやすくなる。
R型菌のコロニーは、ほぼ円形で平坦、表面は粗く(rough)、デコボコである。
O-抗原側鎖が脱落したもので、当然、O-抗原性はなくなっている。

S型菌O抗原

STD (sexually transmitted disease:エスティーディー)

STD (性感染症のこと)
淋病、軟性下疽、梅毒、鼠径リンパ肉芽腫などの古典的な性病を始め、性行為を介して伝染する疾患すべてを指し、性行為感染症ともいわれる。
STDには、それ以外にマイコプラズマ性尿道炎、性器ヘルペス、B型肝炎、尖圭コンジローム、トリコモナス膣炎、エイズ、サイトメガロウイルス感染症、アメーバ赤痢、成人T細胞白血病などがあり、STDは最近増えている。

エイズ淋菌、 軟性下疳、 梅毒、鼠経リンパ肉芽腫、 マイコプラズマクラミジア感染症
S型菌 (smooth form bacteria:えすがたきん)
寒天培地上での腸内細菌の標準型コロニー(集落)。一般に円形、表面は滑らか(smooth)で、光沢がある。
腸内細菌などでは、人工培地で継代培養するとR型に変異することがよくある。
O-抗原側鎖をもち、O-抗原性を持っている。

R型菌O抗原


[あ]

アニサキス症 (anisakiasis:アニサキスしょう)

アニサキスは線虫類で、成虫がクジラやイルカなどの胃に寄生していて、幼虫はサバやイカなどに寄生している。
これらの魚介類を生で食べると、幼虫が胃壁や腸壁に潜入し、アニサキス症を起こす。胃壁に寄生した場合は胃アニサキス症、腸壁に寄生した場合は腸アニサキス症といい、胃アニサキス症の場合、魚介類を生食後4〜8時間で、吐き気や嘔吐を伴い、上腹部に激しい痛みがある。腸アニサキス症では、生食後12時間〜12時間ほどして下腹部が痛み出す。腸アニサキスでは、幼虫は回腸や盲腸に寄生することが多い。

治療は内視鏡を用いて場所を特定し、鉗子でつまみ出す。

→アニサキス
異染小体 (metachromatic granule:いせんしょうたい)
異染顆粒、ボルチン顆粒ともいう。
多くの細菌細胞中に見られ、メチレンブルーやトルイジンブルーで青色に染まらず、赤紫色に染まることから、こう呼ばれている。
異染小体は、ポリメタリン酸顆粒であり、分子内に高エネルギーリン酸結合を持つことから、リン酸とエネルギーの貯蔵庫である。
異染小体を持つ細菌としては、ジフテリア菌がその代表。

(ボルチン顆粒は無機ポリリン酸を含み、異染小体と同じものであると考えられている)

ボルチン顆粒ジフテリア菌
一般形質導入 (generalized transduction:いっぱんけいしつどうにゅう)
普遍導入(ふへんどうにゅう)ともいう。
ドナーのどんな遺伝子でも切り出せる点で、特殊形質導入と異なる。
菌染色体のどこの遺伝子でも導入することができる。

E. coli の P1 phage や、
Salmonella の P22 phage など

形質導入同時形質導入粒子
遺伝子組換え (transgenic:いでんしくみかえ)
微生物学で言うところの、細菌の遺伝子(形質)の組換え様式はいくつかある。
なかでも問題となるのは、薬剤耐性が他の菌に伝搬すること。

接合形質導入ファージ変換形質転換
院内感染 (hospital infection:いんないかんせん)
nosocomial infection ともいう。
病院内で患者や医療従事者、患者の家族、医療器具などを介して、ある病原体が他の患者や医療従事者に感染すること。
たいていの場合、原因となる病原体は薬剤耐性菌であったり、そもそもの病原性は低い菌である。そういったことから、いわゆる日和見感染の一種である。
特に問題となっているのは、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)や、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)によるもので、これらの菌は薬剤耐性のため、治療は難しい。

院内で感染が広まってしまった理由としては、医療器具などの消毒・殺菌が不十分だったことが多い。(再発)予防対策としては、院内に対策委員会を作り、その実態を把握するとともに原因を明らかにし、何らかの対策を取ることが必要。

MRSA感染症、 VRE
インフルエンザ脳症 (influenza encephalopathy:インフルエンザのうしょう)
インフルエンザにかかった後、数日で高熱、けいれん、意識障害が起こる。
経過は早く、死亡率は極めて高い。
インフルエンザウイルスのA型、B型が原因になっていると考えられていて、インフルエンザにかかりやすい幼児や高齢者には、ワクチン接種等を行うことも予防には大切である。

→インフルエンザ
ウェルシュ菌 (Clostridium welcii:ウェルシュきん)
Clostridium perfringens ともいう(最近はこっちで言うことの方が多い)。
丸みのあるグラム陽性桿菌で、べん毛と運動性のないことで他の Clostridia と区別できる。
中央あるいは端在性芽胞をつくる。生体内では莢膜を作る。
嫌気性菌である。
血液寒天培地上で溶血環(β溶血)をつくる。
牛乳培地で嫌気培養すると、特長のあるガスを産生し、 stormy fermentiation と呼ばれる激しい発酵現象を起こす。
卵黄添加CW寒天培地上ではレシチナーゼ(α−toxin)を作ってレシチンを分解する。

A型菌による集団食中毒が年間10件以上報告されている。
腸管内での菌の増殖と、芽胞形成初期に菌体内に作られる腸管毒エンテロトキシンの活性があり、腸炎を引き起こす。
潜伏期6〜18時間で、下痢腹痛で始まり、1〜2日で回復する。嘔吐、吐き気、発熱などの症状は極めて少ない。
C型菌による壊死性腸炎の報告あり。
食中毒ではほとんどの場合自然に治る。

クロストリジウム属、 グラム陽性桿菌、 芽胞形成菌、 嫌気性、 ガス壊疸菌群
エイズ (AIDS:エイズ)
後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome)の略称
ヒト免疫不全ウィルス(HIV)によって起こり、体内で免疫の働きをつかさどっているリンパ球に感染し、破壊してしまうので免疫機能の低下をきたす。
HIVウイルスに汚染された輸血や血液製剤の投与、保菌者との性行為などによって感染する。また、母乳によって垂直感染もする。潜伏期間は数年といわれ、感染者の10〜20%が発症する。エイズ(A1DS)と略す。
症状は発熱、体重減少、疲れやすくなる、下痢、貧血などから始まり、様々な日和見感染や悪性腫瘍を起こす。
日和見感染では、ニューモシスチス・カリニ肺炎(Pneumocystis carinii pneumonia)が多く、そのほかにサイトメガロウイルス感染症、単純疱疹ウイルス(ヘルペス)感染症、EBウイルス感染症、結核、真菌症、原虫感染症などがみられ、悪性腫瘍としては、カポジ肉腫(Kaposi sarcoma)がみられる。
予後は悪く、発病者の50%が数年以内に死亡するといわれている。
患者数は増え続けており、発病者は世界で100万人を超え、日本でも1000人を超えている。また、エイズ関連症候群(ARS、AIDS related syndrome)の患者は、エイズ患者の2倍ほどいると考えられている。ARSは発熱、体重減少、リンパ節が腫れる、下痢、食欲不振など。

日和見感染垂直感染STD後天性免疫不全症候群

[か]

桿菌 (bacillus:かんきん)

菌の形が円柱状に見える細菌の総称。
菌の種類によって、大・小桿菌、長・短桿菌など様々である。

桿菌の例としては、枯草菌、大腸菌、結核菌など

外毒素 (exotoxin:がいどくそ)
微生物によって産生され、菌の体外に放出されて宿主に有害作用を示す物質を外毒素という。外毒素の本体はタンパク質である。また、外毒素はグラム陽性菌によって産生される場合が多い。

毒素内毒素ジフテリア菌緑膿菌コレラ百日咳菌ボツリヌス菌炭疽菌
ガス壊疸菌群 (Clostridia gas gangrene:ガスえそきんぐん)
ウェルシュ菌、ノービ菌、セプティック菌など、ガス壊疸を起こす一群の菌を指す。

クロストリジウム属ウェルシュ菌
球菌 (coccus:きゅうきん)
菌の形が球形、もしくは楕円形に見える細菌の総称。
さらに、単球菌、双球菌、四連球菌、八連球菌、連鎖球菌(多数が数珠つなぎになって見える)、ブドウ球菌の6種に分けられる。

球菌の内、淋菌、髄膜炎菌以外は全てグラム陽性菌である。

狂牛病 (mad cow disease:きょうぎゅうびょう)
正式には牛海綿状脳症(BSE、bovine spongiform encephalopathy)といって、牛がかかる病気で、脳障害をきたす。1986年に、イギリスで初めて確認された。原因は、プリオンと呼ばれる感染性をもった特殊なたんぱく質で、これに感染した羊を餌として与えていたため、牛に感染したと考えられ、1989年に、羊から作られた材料を牛の餌にすることが禁止された。(最近では、狂牛病はもともと牛の病気であって、それが羊にうつったという考えの方が有力)

狂牛病がヒトに感染を起こすかどうかということが問題となっているが、ヒトのプリオン病としては、クロイツフェルト-ヤコプ病(ヤコプ病)が知られている。ヤコブ病は通常、35歳〜65歳ぐらいのヒトがかかる。だが、イギリスで比較的若い年代の患者が報告された。これが狂年病に感染した牛から感染したものではないかと考えられている。

イギリスでは1996年にヤコブ病との関連(というか、ヒトにも感染の可能性があるということ)で大きな社会問題となった。ちなみに、ヤコブ病は、人格障害、痴呆、けいれん、麻痒などを伴い、予後も悪い。

→ヤコブ病
莢膜 (capsule:きょうまく)
細菌の中には細胞膜の外層に、ポリペプチドや多糖体からなる莢膜や粘液層を持つものがある。
光学顕微鏡で見て、その外層との境界がハッキリしているものを莢膜と呼び、ハッキリしていないものを粘液層と呼んでいる。また、粘液層が網目構造をしているとき、特にグリコカリックスと呼んでいる。

炭疽菌(Bacillus anthracis)の莢膜だけは例外で、D-glu のみからなる構造を持っている。

一般に、莢膜を持っている菌は毒性の強いものが多く、ほとんどの莢膜が抗原性を持っていることから、莢膜はK抗原とも呼ばれている。また、莢膜多糖体は菌の免疫学的特異性を決定しているので、血清学的分類に用いられている。

莢膜に、それに合った抗体を反応させると膨らむことからも、その存在が確認できる。(膨化試験)

粘液層炭疽菌
菌交代症 (microbial substitution:きんこうたいしょう)
抗生物質の長期間投与によって増殖を抑えられる菌がいる一方で、抗生物質に感受性のない(抗生物質の効かない)菌は逆に増える。その結果、弱いが病原性のある菌が増えてしまい、発病することをいう。日和見感染の一種である。

日和見感染
クラミジア感染症 (Chlamydia infection:クラミジアかんせんしょう)
クラミジアはオウム病やトラコーマ、鼠径(そけい)リンパ肉芽腫などの原因となる、直径0.3〜1ミクロンの小さな病原体で、オウム病はオウム病クラミジア、トラコーマや鼠径リンパ肉芽腫はトラコーマクラミジアによって起こる。
現在では眼のトラコーマは少なくなり、性器感染による鼠径リンパ肉芽腫とよく似た症状が増えてきている。
数日から数週間の潜伏期を経て発症し、感染局所に小さないぼ状の発疹や水疱を生じ、潰瘍化する。数日で治るが、しばらくするとリンパ節が腫れだし、軽い痛みを伴う。リンパ節が化膿を起こしたあと、やがて治るが、全身性の症状は発熱、頭痛、髄膜炎様症状、結膜炎、発疹、嘔吐、関節痛などを起こす。

ここのところ、クラミジアによる性器感染症が増加してきていて、日本医療センターの調査によると、6人に1人は濃厚感染していたという結果が出てるそうです。
ちなみに性器クラミジアは、男性の方にはほとんど自覚症状なく、治療のための通院期間は2週間ほど。

→クラミジア、 STD
クリプトスポリジウム (Cryptosporidium:クリプトスポリジウム)
原虫の一種であるクリプトスポリジウムによって起こる。本来はウシ、イヌやネコなどの動物に感染しているが、ヒトの腸管に感染することもある。特に、免疫能の低下しているエイズなどの患者に感染することが知られている。

ヒトに感染すると1〜2週間の潜伏期の後、下痢、嘔吐、腹痛、発熱などの症状が出て、たいていは1〜2週間で治る。しかし、免疫能の低下している患者では、致命的なこともある。

1996年の6月に埼玉県で、クリプトスポリジウムによる下痢が多発した。これは水道水がクリプトスポリジウムに汚染されていたためであり、その原因は源水の汚染とクリプトスポリジウムが塩素処理だけでは死滅しないことである。

対策としては、濾過の精度を上げることや、クリプトスポリジウムは熱に弱いので、生水は煮沸してから飲むこと、精度の高い浄水器を使うことなど。

クレブシエラ属 (Genus Klebsiella:クレブシエラぞく)
莢膜を有するグラム陰性菌で、べん毛を持たない非運動性の桿菌。代表的な菌種は肺炎桿菌

→グラム陰性桿菌、 通性嫌気性、 肺炎桿菌
クロストリジウム属 (genus clostridium:クロストリジウムぞく)
芽胞を持つ桿菌の内、嫌気的条件で発育するグラム陽性菌をいう。細胞の幅より大きめの球形または楕円形の内在性胞子を作る。大部分の種は偏性好気性、糖やペプトンから有機酸やアルコールを生成する。
86菌種が存在、約20菌種に病原性がある。

→グラム陽性桿菌、 芽胞形成菌、 ウェルシュ菌ガス壊疸菌群破傷風菌ボツリヌス菌
グラム陰性菌 (Gram negative bacteria:グラムいんせいきん)
グラム染色で、後染色(後に使った染色液)の色に染まる細菌のこと。
髄膜炎菌、淋菌、多くの病原性腸内細菌、大腸菌、プロテウス菌、緑膿菌、インフルエンザ菌、百日咳菌、霊菌、スピロヘータ、赤痢菌、チフス菌、サルモネラ属、大腸菌などの腸内細菌科の菌など。

一般に、グラム陰性桿菌は抗生物質に対して抵抗性を持つものが多い。
ちなみに、動物の組織や血球もグラム陰性である。

グラム染色法lipid ALPSO抗原グラム陰性菌の細胞壁リポ多糖スフェロプラストコア多糖ペプチドグリカン
グラム陰性菌の細胞壁 (Celll wall of Gram negative bacteria:グラムいんせいきんのさいぼうへき)
グラム陰性菌の細胞壁は、内層と外層から成っていて、内層はペプチドグリカンから成り、外層はリポタンパク質、リポ多糖、リン脂質などから成っている。

外層を構成しているリン脂質はホスファチジルエタノールアミンやホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオリピンなどを含み、疎水性(親油性)部分を内側に向けて脂質二重層構造をとっている。そして、リポタンパクがそれとペプチドグリカン層(内層)を連結している。

リポ多糖(LPS, lipopolysaccharide)はネズミチフス菌でよく調べられていて、ネズミチフス菌のリポ多糖は、lipid A、コア多糖、O-側鎖(O-抗原)の3部分から成る。

グラム陰性菌リポ多糖O抗原lipid Aコア多糖
グラム染色法 (Gram stain:グラムせんしょくほう)
グラム(Gram)が考案した細菌の染色法で、鑑別染色によく使われている。全細菌群を2つに分ける分類学上重要な染色法。
まず、細菌をプレパラートなどに塗抹後、弱いバーナーの火であぶって乾燥・固定する。そこに、ゲンチアナバイオレット(クリスタルバイオレットも同じ物。アルカリ性トリフェニルメタン系色素)などで菌体を染色したあと、触媒としてヨウ素(ルゴール液)を作用させてから、アルコール(中性の脱色剤)で菌を脱色する。この後、さらにフクシンやサフランで対比染色(後染色(あとせんしょく))する。

グラム染色法によって、
ゲンチアナバイオレットなどで紫色に染まる(アルコールで脱色されない)グラム陽性菌と、フクシンやサフランなどで染まるグラム陰性菌とに分けている。

グラム陽性菌では、細胞壁成分と結合したゲンチアナバイオレットはルゴール液処理によってアルコールに不溶性のゲンチアナバイオレット-ヨウ素化合物を作る。そのため、アルコールによって脱色されず、ゲンチアナバイオレットの紫色に染まる。

グラム陰性菌では、外膜によってヨウ素化合物が中に入ってくるのが妨げられるため、細胞壁に結合した色素はアルコールなどによって容易に脱色される。脱色されたまま(透明)では顕微鏡での観察が困難なため、対比染色で適当な色(陽性菌の方とは違う色)に染める。

グラム陽性菌グラム陰性菌
グラム陽性菌 (Gram positive bacteria:グラムようせいきん)
グラム染色で、最初に使った染色液の色に染まる細菌のこと。
淋菌、髄膜炎菌をのぞく球菌類、全ての芽胞形成菌、結核菌、ライ菌、ジフテリア菌などがそうである。
全てのグラム陽性菌は、その細胞表面にタイコ酸を持っている。

グラム染色法グラム陽性菌の細胞壁外層構成成分乳酸桿菌属プロトプラストペプチドグリカン
グラム陽性菌の細胞壁外層構成成分 (Cell wall outer layer component of Gram positive bacteria:グラムようせいきんのさいぼうへきがいそうこうせいせいぶん)
タイコ酸と呼ばれる酸性物質を20〜60%含む。含まれるタイコ酸は、リビトールタイコ酸とグリセロールタイコ酸の2種があり、リビトールタイコ酸は、リビトールリン酸が重合した主鎖に糖やアラニンが結合したもので、グリセロールタイコ酸は、グリセロリン酸の重合した主鎖に、D-アラニンや糖が結合したものである。
リビトールタイコ酸は、ペプチドグリカンのムラミン酸と短いグリセロールタイコ酸の鎖を介して結合し、ペプチドグリカン層の外側に存在する。グリセロールタイコ酸も同様にして存在している場合もあり、このようなタイコ酸を細胞壁タイコ酸という。また、グリセロールタイコ酸の一部は細胞膜の糖脂質と結合している。

リン酸欠乏状態でグラム陽性菌を培養すると、タイコ酸が欠乏するが、ウロン酸や、その類似体を含んだタイクロン酸という多糖が細胞壁外層に見いだされる。タイクロン酸はN-アセチルガラクトサミンマロン酸とグルコースから成る。

化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)の細胞壁には、菌特有の炭水化物が存在している。また、群特異的抗原であるC-多糖は連鎖球菌の血清学的性質をつかさどっている。血清学的にA群に分類される連鎖球菌の多糖体は、N-アセチルグルコサミンとラムノースから成り、C群の多糖体はグルコースとN-アセチルガラクトサミンから成る。

グラム陽性菌
形質移入 (transfection:けいしついにゅう)
細菌が、ファージ核酸によって感染を受けたこと。

形質転換 (transformation:けいしつてんかん)
ある細菌の遺伝的性質(形質)が、1つの細胞から他の細胞にうつること。これがDNAレベルで行われる場合、こう呼ばれる。

形質転換の例として、肺炎球菌が有名
肺炎球菌の
S型菌(smooth)は、表面がなめらかな円形で、莢膜を持ち、病原性がある。
R型菌(rough)は、莢膜も病原性もない。

そこで、
R2型の生菌+S3型の死菌をマウスに投与→死亡
*R2型の菌は形質転換を行った。

形質転換の起こる条件は、
1,DNA(exogenote)の大きさ:0.3〜8×106d
2,受容細胞が適格細胞(competent cell)でなければならない。
(対数増殖期のわずか、細胞膜、細胞壁をDNAが通過できる状態でなければ起こらない。)

実験では、グラム陽性菌にリゾチームを作用させてプロトプラストを作り出して行う。
(陰性にはEDTAとリゾチームを作用させてスフェロプラスト)

遺伝子組換え
形質導入 (transduction:けいしつどうにゅう)
ある菌の遺伝子(DNAもしくはプラスミドの断片)がファージによって他の菌に移り、形質が変わる現象。これによって形質導入体(transductant)ができる。テンペレートファージでのみ可能。

サルモネラ、赤痢菌、大腸菌、ブドウ球菌などで栄養要求型、薬剤耐性などの導入が起こることが知られている。

Salmonellaの栄養要求株LA2(his−)とLA22(trp−)をガラスフィルターで区切った容器に入れる。→LA22(his+,trp+)が生じる。
* DNase、RNaseを入れても起こる。……ということは、形質転換とは違う。
ファージを介して行われることが形質転換との違い。

一般形質導入と、特殊形質導入の2つに分けられる。

プラスミドテンペレートファージ一般形質導入特殊形質導入遺伝子組換え形質導入粒子同時形質導入粒子不稔導入
形質導入粒子 (transduction particle:けいしつどうにゅうりゅうし)
ファージは、宿主細胞の中に入った後、ファージの遺伝子を複製し、宿主細胞から出るときには、自分の遺伝子と宿主の遺伝子の一部を持って出ていく。しかし、たまに自分の遺伝子を持ってなく、宿主の遺伝子の断片のみを持っているものがある。ファージとしての性質は失っているが、形質導入を行うことができる。これを形質導入粒子と呼ぶ。特殊形質導入の一種である。

形質導入特殊形質導入同時形質導入粒子
結核菌 (Mycobacterium tuberculosis:けっかくきん)
グラム陽性桿菌だが、細胞壁中に多量の脂質を含むので染色性は悪い。塩酸アルコールで洗浄しても脱色されない。pH6.8〜7.3位で増殖する。寒天培地では発育せず、グリセリンを主体とする卵培地を用いる。

ヒト型 M. tuberculosis
ウシ型 M. bovis
トリ型、ネズミ型、冷血動物
ヒトには、ヒト型、ウシ型が病原性あり。
伝染性疾患で、全体の90%が肺結核

吸入によって感染し、肺で増殖し、一部はリンパ節に運ばれて、リンパ節病巣を作る。(初期変化群)
感染後3〜4週間で免疫ができ、ツベルクリン反応が陽性になる。多くはそのまま自然治癒する。結核菌はマクロファージ内で増殖するので、血中抗体は効かない。
初期感染の段階で生体の抵抗力が低下していると、病巣が広がって肺結核となる。さらに、リンパ行性、血行性にひろがり、多くの臓器、骨、関節、泌尿生殖器、脳膜、皮膚などに感染巣を作る。普通は慢性化するが、結核性肺炎、髄膜炎、粟粒結核などは急性である。

予防には、BCG (Bacille de Calmette et Guerin)の生菌ワクチン、(ウシ型を弱毒化させたもの)を用い、薬局方に“乾燥BCGワクチン”収載されている。
治療は、イソニコチン酸ヒドラジド(INH)、リファンピシン(REP)の2剤併用、これにストレプトマイシンまたはエタンブトールを加えた3剤併用療法を行う。

1999年に、多剤耐性結核菌の集団感染が報告され、現在非常に治療が難しい状態である。

マイコバクテリア、 グラム陽性桿菌、 好気性
劇症溶連菌感染症 (toxic shock-like syndrome:げきしょうようれんきんかんせんしょう)
A群溶血性連鎖球菌(溶連菌、haemolytic streptococcus)は通常、のどなどに常在していて、風邪などの原因になる菌である。劇症溶連菌感染症は38℃以上の高熱や、のどの痛みなど、風邪のような症状で始まるが、高熱が続き、やがて菌が血液中に入り込んで敗血症を起こし、ショックに陥る。また、この感染症の特徴である、手足の筋肉の激しい痛み(相当ひどい筋肉痛)も起こし、時として手足の壊死などの激しい症状を伴う。
1985年にアメリカで第一例が報告されて以来、200例以上が確認され、日本でも1993年に最初の例が報告されている。早期に抗生物質、特にペニシリンの大量投与で治療するが、進行が速いので手遅れになることが多い。1994年に、厚生省は研究班を設置している。

ちなみに、夏場になるとよく巷を騒がしている人食い菌とかいうやつは、これのこと。なんかイギリスで流行って(といっても患者は十人に満たない)以来、噂されることが多い。なにせ進行が早いのと、国内ではまだ臨床例が少ないのもあって、救急医でも何の病気か検討を付けられなかったりする。とりあえず、肝臓が弱ってる人が感染しやすいので、深酒が過ぎる人は夏場と秋口は刺身とかの生ものは避けた方が吉。

→溶血性連鎖球菌
原核細胞 (prokaryotic cell:げんかくさいぼう)
前核細胞とも呼ばれる。
大きさは真核細胞よりも小さく、核膜を持たず、ミトコンドリア、ゴルジ体、小胞体なども持っていない。また、DNA糸が細胞質全体に分散している。

真核細胞との違いは、
核が核膜に包まれていないこと、
染色体が環状DNAから成ること、
ミトコンドリアが存在しないこと(細胞膜が、その機能を持っている)、
70S(Sは沈降係数)リボソームをもつこと、
細胞壁にペプチドグリカン構造を持っていること、
細胞分裂の際に、有糸分裂をしないこと、
細胞膜の成分にステロールを含まないこと、
細胞質流動を起こさないことなど

真核細胞
コア多糖 (core polysaccharide:コアたとう)
微生物学上では、R core と呼ばれることもある。
コア多糖(R core)は、KDO(2-ケト-3-デオキシオクトン酸)、ヘプトース、グルコース、N-アセチルガラクトサミンなどからできていて、グラム陰性菌の細胞壁外層の構成成分の一つである。

グラム陰性菌コア多糖lipid Aグラム陰性菌の細胞壁リポ多糖
抗原 (antigen:こうげん)
Ag と略記されることもある。
おおざっぱに言うと、生体にとっての異物。
主にタンパク質であるが、特殊な多糖類も抗原となることがある。
抗原とは、生体内に侵入したときに、その生体に抗体の産生をさせ、生じた抗体と反応する物質のこと。
抗原は、通常、分子量が10000以上である。
脂質や核酸は、タンパク質と結合したときに抗原性を示す。

抗原抗体反応抗体
抗原抗体反応 (antigen-antibody reaction:こうげんこうたいはんのう)
抗原と、それに対応する抗体との間の特異的反応のこと。
沈降反応、凝集反応、血球凝集反応、血球吸着反応、免疫溶解反応、補体結合反応、免疫けい光反応、食作用示数反応などを総称して抗原抗体反応と呼んでいる。

抗原抗体
抗体 (antibody:こうたい)
Ab と略記されることもある。
抗原に対して体内で生産され、抗原と特異的に反応する。
基本的には、免疫抗体とアレルギー抗体とに分けられる。

抗原抗体反応抗原
後天性免疫不全症候群 (acquired immunodeficiency syndrome:こうてんせいめんえきふぜんしょうこうぐん)
エイズ(AIDS)の日本での呼称
エイズの項を参照

エイズ
コッホの3原則 (コッホのさんげんそく)
1,その菌は、病変部から見つけられなければならない。
2,その菌は、その病気からのみ見つけられなければならない。
3,その菌を純粋培養し、感受性のある動物に接種したとき、同じ病気を引き起こし、さらに病変部から同じ菌が見つからなければならない。

コッホの4原則
コッホの4原則 (コッホのよんげんそく)
1,その菌がいつも、その病変部から見つけられなければならない。
2,その菌は、病巣から聞知された後、純粋培養できなければならない。
3,培養された菌を、健康な感受性動物に接種した場合、元と同じ疾患が再現されなければならない。
4,その菌は、再びその病変部から分離できなければならない。

コッホの3原則
コリネバクテリウム属 (genus corynebacterium:コリネバクテリウムぞく)
グラム陽性、多形性(短冊状、松葉状など)の棍棒状桿菌、通気性または通性嫌気性
菌体内にポリメタリン酸を主成分とする異染小体を持ち、運動性はない。
非抗酸菌であるが、細胞壁中に短いミコール酸の鎖を持つ。
自然界に広く分布しており、ヒトでは気道や粘膜などの常在している。
また、コリネバクテリウム属には、植物病原菌種も多く含まれている。

ジフテリア菌、 グラム陽性桿菌
コレラ (cholera:コレラ)
アジア型とエルトール型があり、アジア型は病原性が強く、エルトール型は弱い。最近流行したコレラはすべてエルトール型である。コレラ菌は外毒素であるコレラトキシンを出し、下痢を引き起こす。コレラの症状は特徴的な「米のとぎ汁状」の下痢、嘔吐、脱水症状、意識の混濁など。
日本では1977年の有田川コレラ事件以来、毎年50件ほどが発生していて、大部分は東南アジアからの輸入感染、もしくはその二次感染と考えられている。
1993年頃からインドで病原性の強いタイプのコレラ(O-139)の流行が起こっている。

外毒素輸入感染症
コレラ菌 (Vibrio cholerae:コレラきん)
桿菌で、べん毛を持つ。
普通寒天培地で良く発育するが、至適pHはアルカリ側(7.6〜8.2)である。

アジア型コレラ(biovar cholerae)と、エルトール型コレラ(biovar eltor)があり、その血清型は、O抗原によって分けられている。

→グラム陰性桿菌、 通性嫌気性、 ビブリオ科

[さ]

サルモネラ属 (Genus Salmonella:サルモネラぞく)

ヒト及び動物のチフス症の原因菌。また、ヒトの食中毒の原因となる菌を含む膨大な菌群
現在は生化学的性状とDNAの相関性とに基づいて2菌種 S.enterica、 S.bongori に分類

(1) チフス性疾患:チフス菌(S.Typhi)、パラチフス菌(S.paratyphi A)によって起こる。
持続性の高熱、潜伏期は10〜14日、菌は小腸粘膜から侵入し、パイエル板で増殖、リンパや血流を介して全身へ移動し、脾臓、骨髄、胆のうなどに特異な病巣を作る。
菌の内毒素により発熱、白血球減少、脈拍減少、小腸の潰瘍、腸出血、腸穿孔、腹膜炎などを起こす。

(2) 急性胃腸炎(食中毒):原因菌はサルモネラと呼ばれる。通常は10の六乗個以上の菌を接種することによって発症するとされていたが、現在は10の二乗または10の三乗個でも発症する。
易感染性宿主(compromised host)では数個から数十個の感染でも発症する。不顕性感染も多い。12〜24時間の潜伏期の後、腹痛、下痢、嘔吐、頭痛、発熱などの胃カタル症状を示す。発熱の持続日数は4日ほど、約50%の患者は回復後2〜4週間の間排菌し、中には数ヶ月排菌する場合もある。
複数の菌によって起こる、ゲルトネル菌(S.Enteritidis)、ネズミチフス菌(S.Typhimurium、 S.Hadar、 S.Infantis、 S.Thompson、 S.Litchfield)など。近年、ゲルトネル菌の検出件数が激増してい、汚染源は鶏卵とされている。

→グラム陰性桿菌、 通性嫌気性、 チフス
在郷軍人病 (legionnaire's disease:ざいごうぐんじんびょう)
legionellosis とも言う。
レジオネラ菌による感染症で、1976年にアメリカのフィラデルフィアで行われた在郷軍人大会に出席した者がこれにかかったのが最初の報告だったことからこう呼ばれる。
全身倦怠感や筋肉痛、軽い頭痛などの症状のあとに、急に発熱し、悪寒、ふるえを伴い、咳、淡、胸痛や呼吸困難、腹痛、吐き気、下痢等を起こし、肺炎を引き起こす(X線写真に影が出る)。日和見感染の一つともいわれている。
最近、レジオネラ菌がクーラーなどの冷却水や二十四時間風呂などの中に生息していることが指摘されていて、その滅菌法が問題となっている。また、温泉や銭湯もこの菌によって汚染されている場合がある(薬湯の場合、入っている成分によって水道水中の塩素が中和されてしまうため)。
ちなみに、二十四時間風呂の件で、一部のメーカーは製品の回収や販売停止を行っている。

日和見感染レジオネラ
シゲラ属(赤痢菌属) (Genus Shigella:シゲラぞく)
小桿菌で無芽胞、運動性(−)
ほ乳類の腸管にのみ生息、胆汁酸塩で発育を阻害されない。
Shigella dysenteriae
マニトール非分解の赤痢菌で病原性が強い。近年、日本では発症例がほとんどない。

→グラム陰性桿菌、 通性嫌気性、 赤痢菌
脂質顆粒 (lipid granule:ししつかりゅう)
ポリ-β-ヒドロキシ酪酸(PHB)から成っていることから、ポリ-β-ヒドロキシ酪酸顆粒とも呼ばれている。
スダンブラック(Sudan Black)に良く染色される。また、高い屈折率を示し、光学顕微鏡で見るとキラキラと輝いて見える。有機溶媒によく溶ける。

脂質顆粒は、含炭疽化合物の基本骨格の材料として使われる。また、TCAサイクルを動かすためのエネルギー源でもある。

PHBは、2分子のアセチルCoAからアセトアセチルCoAを経由して合成される。
また、PHBは、菌体での炭素源が不足すると、加水分解を受け、β-ヒドロキシ酪酸となり、アセト酢酸を経由してアセチルCoAとなってTCAサイクルに入る。

シュードモナス属 (Genus Pseudomonas:シュードモナスぞく)
多くの抗生物質に自然耐性を持つ。
院内感染などでは、もっぱら緑膿菌が問題となる。

→グラム陰性桿菌、 偏性好気性、 緑膿菌
真核細胞 (eucaryotic cell:しんかくさいぼう)
原核細胞よりも大きく、構造も複雑で、核が核膜に包まれていて、ミトコンドリア、ゴルジ装置、リソソーム、小胞体、リボソームなどを持つ。
有糸分裂、減数分裂をする。

原核細胞との違いは、
核が核膜に包まれていること、
染色体が長い線状DNAから成ること、
ミトコンドリアが存在すること、
80S(Sは沈降係数)リボソームをもつこと、
細胞壁にペプチドグリカン構造を持っていないこと、
細胞分裂の際に、有糸分裂すること、
細胞膜の成分にステロールを含むこと、
細胞質流動を起こす場合があることなど

原核細胞
ジフテリア菌 (Corynebacterium diphtheriae:ジフテリアきん)
1883年 Klebs によりジフテリア患者の咽頭の偽膜染色標本中に初めて発見。
多形性の桿菌で、菌体は相互に松葉状(V,W,L字型)、柵状配列を取る。一端または両端が棍棒状に膨れている。芽胞、べん毛、莢膜は形成しない。アニリン系染色を行うと菌体内に異染小体が観察される。血液寒天培地によく増殖する。

gravis、 itermedius、 mitis 型の3種の型の集落がある。
gravis 型はグリコーゲンを分解し、モルモットに対する病原性は3種の内で最も強い。グルコース、マルトース、デキストリンを分解するが、ガスは産生しない。
種々の糖に対する分解性状の違いは、人に病原性を示すジフテリア菌と多種菌の鑑別に利用されている。

この菌は、外毒素を生産するが、本来のジフテリア菌は毒素産生能を持っていない。毒素は、毒素非産生株が特定のファージ(β)に感染(溶原化)されることにより生ずる。

ジフテリアトキソイドによる予防接種が普及する以前は小児の主要な死亡原因の1つであった。外毒素により発生し、毒素の作用がよく研究されているものの1つである。毒素は分子量約 58、000の易熱性単純タンパクであり、ニック(切れ目)の入った毒素のS-S結合を切るとAフラグメントとBフラグメントに分かれる。フラグメントAはNAD存在下で真核細胞のポリペプチド鎖の伸長因子2(EF2)をADP−リボシル化し、失活させる。BフラグメントはAフラグメントの細胞内侵入のため、レセプターへの結合、脂質層の通過に関与していると考えられている。(A、B両方がないと病原性なし)

患者または保菌者から飛沫感染する。潜伏期は2〜7日、感染局所に灰色の偽膜を作り、菌が増殖する。菌は血中にはいることはなく、増殖と共に産生された外毒素が血中に吸収され、局所、全身症状が現れる。副腎、肝臓、心筋、神経の変性を伴う障害が起こり、その後に呼吸筋、心筋麻痺を起こす。心筋変性による心臓障害はジフテリアによる死因の主なものである。
感染経路としては接触感染もある。感染は、鼻粘膜・咽頭粘膜が多いが、皮膚、性器、眼、中耳に感染巣を作ることもある。

予防にはジフテリアトキソイドの接種が行われている。
ジフテリアトキソイドと破傷風を混合したものと、百日咳と破傷風と混合した3種混合ワクチンがあり、通常、3種混合ワクチンを乳児、小児を対象に接種している。
ジフテリアは病状の悪化が速いので、検査結果を待ってから治療を開始することが出来ない。早期発見・治療が大事である。治療はジフテリア抗毒素をできるだけ早期に大量に投与し、エリスロマイシンなどのマクロライド系の抗生物質を併用する。

ジフテリアは、現在散発的に患者の発生が報告されている。予防接種の行われている国では患者数が激減している。だが、1993年にロシアでの流行が報告され、ワクチンの整備状況の悪化が流行を引き起こすこととなることが明らかとなった。
1993〜1997年に、イングランドとウェールズで輸入毒素型ジフテリア感染症が報告されている。

コリネバクテリウム属、 グラム陽性桿菌、 異染小体外毒素ファージ変換
垂直感染 (vertical infection:すいちょくかんせん)
vertical transmission ともいう。
母親から子供、あるいは胎児へ感染すること。垂直感染の例として、母乳を介して感染するエイズや成人T細胞白血病、出産の際に産道を介して感染するB型肝炎や淋病などがある。

エイズ、 成人T細胞白血病、 B型肝炎、 淋病、 水平感染
水平感染 (horizontal infection:すいへいかんせん)
通常の伝染病はヒトからヒトへか、動物からヒトへうつる。こういった感染の仕方を水平感染と呼ぶ。

垂直感染
スフェロプラスト (spheroplast:スフェロプラスト)
グラム陰性菌をEDTAとリゾチームで処理すると、ペプチドグリカン層が破壊され、細胞膜と細胞壁の一部が残った球状の細胞ができる。これをスフェロプラストという。
細胞壁が一部残っているため、このままの状態では、すぐには溶菌しないが、周りを低張にすると浸透圧によって溶菌してしまう。

グラム陰性菌溶菌
髄膜炎菌 (Neisseria meningitidis:ずいまくえんきん)
腎形の双球菌、流行性脳脊髄膜炎を起こす。「四類−全数」感染症に分類
10歳以下の子供がかかりやすく、鼻粘膜から侵入、増殖した菌が血中に入り、その後、髄膜に入って、脳や髄膜で化膿性炎症を起こす。本質的には菌血症であり、発疹、発熱、筋痛、関節炎などの症状が出る。

→グラム陰性球菌、 好気性、 ナイセリア属
接合 (conjugation:せつごう)
遺伝的に標識されている2種の大腸菌を混ぜる→それぞれの細胞の一部で融合→有性生殖を行う。

F+菌:雄性菌、F−菌:雌性菌    *単体では無性生殖を行う。
F線毛…粘着性があり、F−菌をとらえる。→F線毛を引っ込めてたぐり寄せる。→接合→F-DNAが接合管を通ってF-菌に移ってF+菌ができる。(約2時間)

遺伝子組換えF因子
セレウス菌 (Bacillus cereus:セレウスきん)
土壌、塵やほこりなど、自然界に広く分布
1〜1.2×3〜5μmの両端直角の大型桿菌で連鎖になりやすい。
中央性の胞子を生成する。栄養型細胞には周毛もがある。菌種によっては運動性
R(rough)型コロニーを作る。卵黄培地で卵黄反応陽性
菌体外に毒素を生産する。
易熱性の溶血素I、耐熱性の溶血素でβ溶血を行う溶血素ii、エンテロトキシン(菌の増殖期に形成され、芽胞形成期に減少する。)など

食中毒では、臨床例で2つの型に分けられる。
・潜伏期が8〜16時間で、下痢腹痛を起こす下痢型 (海外で多い)
・潜伏期が1〜5時間、嘔吐を主症状とする嘔吐型  (日本で多い)

大量の菌が腸管で増殖し、エンテロトキシンを産生することによって起こる。
嘔吐型の食中毒は日本で多く報告されている。原因食は、持ち帰り品が多い。(焼き飯、焼きそば、スパゲッティーなど)

治療は対症療法がメインで、通常、抗生物質は使用しない。

→グラム陽性桿菌、 芽胞形成菌
線毛/繊毛 (cilium / pili:せんもう)
線毛と書いても良いし、繊毛と書いても良い。
多くのグラム陰性菌の細胞表面には、鞭毛よりも細くて短い中空の繊維(線維)が数本〜数百本存在する場合が多い。これを線毛と呼ぶ。
線毛には運動性はないが、粘着性があり、細菌細胞が宿主の細胞へ付着するときなどに重要な役割をしている。

線毛は、分子量約1.7万のピリン(pilin)と呼ばれるタンパク質が右巻きらせん状に集まった中空の繊維で、染色体に支配(コード)されているもの(普通線毛)と、プラスミドに支配されているもの(プラスミド性線毛)がある。

プラスミド性線毛には、それぞれF因子、R因子によってコードされているF線毛、R線毛などがある。

プラスミドR因子鞭毛F因子
走化性 (chemotaxis / chemotropism:そうかせい)
走化性(走性の一種)には、正の走化性と、負の走化性の2種類がある。
濃度の異なる物質があるとき、その物質が何であるかによって2つの挙動を示す。
正の走化性とは、その物質の濃度の低い方から高い方へと菌が進むことで、その物質が、その菌にとって誘引物質であることがわかる。
また、負の走化性とは、その物質の濃度の高い方から濃度の低い方へと菌が進むことで、その物質が、その菌にとって忌避物質(きひぶっしつ)であることが分かる。

このように、化学物質によって走性をかえることを走化性という。
鞭毛は、いくつかの化学物質に対してのレセプターを持っていて、その化学物質がレセプターに特異的に反応すると、運動器官に刺激が伝わり、正か負か、どちらかの運動が起こる。

鞭毛の運動機構鞭毛

[た]

炭疽菌 (Bacillus anthracis:たんそきん)

1〜1.5×4〜8μm、病原菌中で最も大きい両端直角のグラム陽性桿菌
生物体内では莢膜(D−グルタミン酸よりなるポリペプチド)を作る。
環境が悪くなると楕円形の胞子を菌体中央部に作る。この胞子は100℃の加熱や乾燥でも死滅しない。
元来は、ウシ、ヒツジなどの草食動物の感染症で、炭疽菌は人畜共通感染症の起因菌である。
ヒトへの感染は、
創傷面より感染 皮膚炭疽(ヒトでは最も多い)
胞子の吸入肺炭疽
汚染獣肉の摂取 腸炭疽の3臨床型

感染後12時間から72時間の潜伏期
ヒトでは皮膚感染が最も多く、傷口から侵入、局所増殖の後、膿疱を形成する。周囲に浮腫が見られ、やがて敗血症に移行する。
外毒素は、浮腫因子、防御抗原、致死因子の3つから構成
「4類−全数」感染症

→グラム陽性桿菌、 芽胞形成菌、 バチルス属外毒素莢膜
大腸菌 (Escherichia coli:だいちょうきん)
0.5μm×1〜4μmの桿菌、無芽胞で、多くは周毛性べん毛を持つ。
10〜45℃で発育可能、グルコースや乳糖などの糖を発酵で分解し、酸とガス(CO2、H2)を産生。
アセチルメチルカルビノール(−)、クエン酸を炭素源として利用しない。
インドール(−)、H2S(−)

(1) 腸管病原性大腸菌(EPEC) enteropathogenic E. coli
乳幼児下痢、たまに成人の下痢、下痢、腹痛、悪心、嘔吐、発熱

(2) 組織侵入性大腸菌(EIEC) enteroinvasive E. coli
赤痢菌と同じ腸管粘膜への侵入、増殖能を持つ。

(3) 毒素性大腸菌(ETEC) enterotoxigenic E. coli
コレラに類似の水溶性下痢症。メキシコや東南アジアへの旅行者の下痢の主要起因菌。腹痛、嘔吐を伴う水溶性下痢、発熱はない。下痢毒素として易熱性の(LT、 heat-labile enterotoxin)または耐熱性エンテロトキシン(ST、 heat-stable enterotoxin)を産生

(4) 腸管出血性大腸菌(EHEC) enterohemorrhagic E.coli
ベロ毒素産生性大腸菌(VTEC):1982年アメリカでハンバーガーによる食中毒の原因
菌として分離された。血清型O157:H7の大腸菌、軽い下痢、感冒様症状で始まり、
やがて激しい腹痛を伴った鮮血便となり、末梢白血球の増加、破砕赤血球の出現、貧血、血小板減少、尿量減少、腎機能障害が現れ、1〜10%ほどの割合で溶血性尿毒症症候群(HUS、 hemolytic uremic syndrome)を起こす。HUSは、脳症、腎不全、血管の破綻で致死率3〜4%
Vero細胞に毒性を示す生物活性を有する毒素(VT)を産生する。これは、志賀赤痢菌
(Shigella dysenteriae 1)の毒素と同じである。この菌は、ヒトからヒトへ感染するなど、従来の食中毒菌とは異なる。
1996年8月に指定伝染病となり、3類感染症に分類されている。

(5) 腸管付着性大腸菌(EAEC) enteroadherent E.coli
小児の慢性下痢症、菌には粘膜細胞に付着するための線毛が存在する。

腸内細菌科、 グラム陰性桿菌、 通性嫌気性、 病原性大腸菌
ダルトン (Dalton:だるとん)
Da もしくは d と表記することがある。
染色体やリボソーム、ミトコンドリア等は分子量を表す適当な方法がないので、このダルトンという質量単位を用いて表す。

ちなみに、kDa(キロダルトン)=1000 Da
1ダルトンは炭素12(同位元素 12C)原子の質量の12分の1と定義される。

dDa
腸球菌属 (genus enterococcus:ちょうきゅうきんぞく)
Enterococcus 属の菌で、17種が存在。
最近、バンコマイシン耐性の腸球菌(VRE Vancomycin Resistant Enterococci)による院内感染が問題となっている。バンコマイシン耐性の遺伝子として、vanA、vanB、vanC が存在する。PCR法で検出する。

→グラム陽性球菌、 ミクロコッカス科
腸内細菌科 (Family Enterobacteriaceae:ちょうないさいきんか)
グラム陰性噎芽胞の通性嫌気性菌で、Shigella属、Klebsiella属以外は周毛性べん毛を持つ。
グルコースや他の糖、アルコールを発酵によって分解して酸を生成する。
主として、O,H,K抗原の違いによって分けられる。
1)O抗原:菌体抗原(somatic antigen)細胞壁のリポ多糖体タンパク複合体、121℃、2時間に耐える。
2)H抗原:べん毛抗原(flagellar antigen)べん毛を構成する易熱性タンパク
3)K抗原:莢膜またはエンベロープの多糖質性の抗原、O特異抗原の凝集を阻害する。
4)F抗原:線毛抗原、粘着に重要な役割を果たす。

→グラム陰性桿菌、 通性嫌気性、 大腸菌
ツツガムシ病 (tutugamushi disease:ツツガムシびょう)
trombiculosis とも言われる。
オリエンチア・ツツガムシによって起こり、媒介動物はダニ。
1〜2週間の潜伏期の後、高熱、かまれた部分の発疹、潰瘍、リンパ節が腫れたりする。

第二次大戦後、新潟、秋田、山形などで多く発生したが、農薬などの使用でダニが減ったためか、ツツガムシ病の発生も少なくなっていった。
最近では環境問題などによる農薬の使用制限のためか(?)、ダニの増加が見られ、ツツガムシ病の発生も少し増えてきている。

→ツツガムシ
テンペレートファージ (temperate phage:テンペレートファージ)
日本語で言うと、溶原化ファージのこと。
細菌に感染すると、高い確率で細菌の染色体に取り込まれる。
活性化(誘発)されない限り、溶菌は起こさない。

プロファージ溶原化形質導入溶原菌バクテリオファージ
特殊形質導入 (specialized transduction:とくしゅけいしつどうにゅう)
特定の遺伝子のみをドナーから切り出す。
E. coli の λphage などのように、特定の遺伝子だけを導入する。

E. coliのλファージは、attλの所にしか入れない。
いったん溶原化した後、宿主の外に飛び出すときに、attλの位置からファージ遺伝子を切り出し、それを自分の中に入れるのだが、切り出すときにファージ遺伝子の脇も余分に切ってしまうことがある。

形質導入形質導入粒子
トラコーマクラミジア (Chlamydia Trachomatis:トラコーマクラミジア)
眼疾患や尿道炎、子宮頸炎などのSTDで、接触感染する。バクテリアではない。

→クラミジア
同時形質導入粒子 (cotransduction particle:どうじけいしつどうにゅうりゅうし)
形質導入粒子のなかに複数の遺伝情報が入っている場合、こう呼ぶ。同時形質導入を行うことができ、一般形質導入の一種である。

形質導入形質導入粒子一般形質導入
毒素 (toxin:どくそ)
生物に起源をもつ毒性の高い物質のこと。主として動物の体内で有毒な高分子物質を指す。微生物学上では、微生物が産生する宿主に対して有害な物質を指し、内毒素と外毒素に分類することができる。

内毒素外毒素

[な]

ナイセリア属 (genus Neisseria:ナイセリアぞく)

直径0.6〜1μmの双球菌状、または対を成すか短連鎖状の卵形。
至適発育温度35〜37℃、人に対して病原性を示すのは淋菌と髄膜炎菌の2種

→グラム陰性球菌、 好気性、 淋菌髄膜炎菌
内毒素 (endotoxin:ないどくそ)
内毒素は、グラム陰性菌の細胞壁構成分が、菌の自己融解などによって菌体外に遊離され、宿主に有害作用を示すものである。その有害作用の主成分は、リポ多糖(LPS)であり、リポ多糖のリピドA(lipid A)の部分に大部分の毒性がある。
一般に内毒素の有害作用は、外毒素ほど強力ではないが、発熱、白血球の減少、低血糖、下痢を伴った循環障害を引き起こす。また、内毒素の作用には、菌の種による差がほとんどない。(リポ多糖の構成成分が似ているため)

毒素外毒素リポ多糖
夏型過敏性肺臓炎 (summer-type hypersensitivity pneumonitis:なつがたかびんせいはいぞうえん)
夏にだけ発症するアレルギー性肺炎で、一般的には発熱、咳、呼吸困難を主症状として、痰、全身倦怠感、頭が重い、体重減少などの症状がみられる。
こうした症状は普通、夕方から夜にかけて現れ、朝には治っているということを繰り返す。また、血液中の白血球の増加、炎症などがみられる。そして、胸部X線撮影で、過敏性肺臓炎特有の異常像が観察される。

原因としては、かびの一種である、トリコスポロン・クタネウムなどが考えられている。
患者数の年齢は30〜60歳に集中していて、屋内でかびに触れる機会の多い女性の患者数が、男性患者数の約2倍にのぼる。患者の発生は西日本が中心で、治療には、とりあえず、かびの除去が必要。基本的には治りやすいとされる。

日本紅斑熱 (Japanese spotted fever:にほんこうはんねつ)
リケッチアジャポニカによって起こる感染症で、ダニが媒介する。感染したダニに刺されてから2〜8日後に頭痛、さむけ、発熱、発疹、全身倦怠感などの症状が現れる。
発疹は、顔や手足に米粒〜小豆ぐらいの大きさの紅斑がたくさん現れ、体の中心部に向かって広がる。かゆみや痛みはないが、出血することがある。
1984年に、日本で初めて報告された。

→リケッチア
乳酸桿菌属 (genus lactobacillus:にゅうさんかんきんぞく)
通性嫌気性菌だが、カタラーゼ陰性、チトクローム陰性で、微好気性あるいは嫌気性で発育する。
増殖には複雑な有機成分を必要とする。乳酸発酵を行い、乳酸のみを産生する種を homofermenter という。一般に非病原性で、ヒトの口腔、腸管に常在。成人女性の腟内には Doederlein 桿菌という乳酸属の混合菌群が存在し、膣粘膜上皮細胞のグリコーゲンを分解し、大量の乳酸を作り、腟内のpHを酸性に保ち、健康維持に関与している。
発酵食品、乳酸菌製剤などに利用されている。

グラム陽性菌、 通性嫌気性
粘液層 (slime layer:ねんえきそう)
莢膜(きょうまく)の項を参照

莢膜

[は]

肺炎球菌 (Streptococcus pneumoniae:はいえんきゅうきん)

グラム陽性の双球菌の代表的菌
直径05〜1.25μm
2個のランセット型の菌が相対している。
明確な莢膜を持つが、継代培養すると莢膜を失うことがあり、莢膜を失うと病原性がなくなる。
莢膜抗原の違いにより、80以上の菌に分類される。
それぞれに対応する抗体を与えると、莢膜が膨化する。(膨化試験)
「4類−定点」感染症に分類

*莢膜は白血球の貪食作用に対する抵抗性を与えている。

細菌性肺炎の原因菌の一つである。
第一次選択剤はペニシリンG、エリスロマイシン
最近、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP penicillin resistance Streptococcus pneumoniae)が検出されている。

→グラム陽性球菌、 ミクロコッカス科
破傷風菌 (Clostridium tetani:はしゅふうきん)
偏性嫌気性の両端鈍端な細長い桿菌、グラム陽性、莢膜はないが、周毛性べん毛があり、運動性がある。
24〜48時間培養で端在性の菌体幅より大きな芽胞を形成し、太鼓のバチ状に見える。芽胞は極めて抵抗性で、土中に広く分布している。
1889年、北里柴三郎によって純粋培養された。
嫌気培養法(-100mV以下)で培養する。

破傷風は新生児破傷風とその他の年齢の破傷風に分類できる。
新生児破傷風は日本ではほとんど見られないが、致死率90〜95%である。
破傷風は、破傷風毒素(tetanuspasmin)により発症し、神経毒である。
毒素は分子量約15万のタンパク質として菌体内に生産される(プロトキシン)。菌の融解と共に菌体外に放出され、タンパク分解酵素により分子量5万と10万のフラグメントに分解されるが、S-S結合や非共有結合で結合した nicked toxin の形となって毒性が強くなる。
毒素は中枢神経系に作用し、運動系の活動を亢進し、全身の骨格筋の激しい疼痛を伴う不随意収縮を引き起こす。また、大量の毒素でボツリヌス毒素様の麻痺性の症状も起こす。

毒素は易熱製で、65℃、5分で失活する。
その他、溶血素(tetanolysin)、線維素溶解毒素を生産する。

潜伏期は平均4〜10日、まず咀嚼筋(そしゃくきん)が硬直し、開口障害 trismus を起こす。節食不能、ついで顔面筋の緊張、前額にしわを生じ破傷風顔を呈する。さらに頸部硬直、激しい疼痛を伴う強直性痙攣を起こした後、呼吸筋・心筋麻痺により死に至る。患者は死の直前まで意識があり、感覚系も亢進しているので悲惨な病状を呈する。
予防には三種混合ワクチンを用いている。

クロストリジウム属、 グラム陽性桿菌、 芽胞形成菌、 偏性嫌気性
ハンセン病 (Hansen disease:ハンセンびょう)
leprosy とも言う。
らい菌(Mycobacterium leprae)によって起こる感染症で、主に乳幼児期に感染し、症状は徐々に進行する。皮膚に病巣を作り、末梢神経障害、発汗の低下などの症状がみられる。
現在では効果的な治療薬もあり、予後も良い。
最近では、新たな患者の発生は年間10人未満。

1907(明治40)年にライ予防に関する法律が制定されて以来、強制隔離などによって、患者の人権は著し<侵害されていた。1996年に、実に89年ぶりにこの法律が廃止され、国立療養所への入所、入所者の外出制限などの差別的措置は廃止された。

ライ菌
バクテリオファージ (bacteriophage:バクテリオファージ)
細菌に感染し、増殖するウィルスの一群のこと。ただ単にファージと言ったりもする。本体は、DNAかRNAを持つ核タンパク質である。

細菌に感染し、細菌体内に入るのは、ファージの核酸のみで、感染後は、
1,すぐに自己増殖し、溶菌を起こす。 
2,細菌の染色体に組み込まれてプロファージとなって菌を溶原化する。 のどちらかとなる。

ビルレントファージテンペレートファージプロファージ溶原化溶菌
バクテロイデス (bacteroides:バクテロイデス)
英語でなんて言うのか不明、ラテン語しか見つからなかった…。
グラム陰性菌で、多形性または桿菌に近い形をしている。
酸素にふれると発育が停止する、あるいは死滅してしまう偏性好気性菌で、ヒトなどの動物の体腔(特に胃腸管)に常在する。

バクテロイデス自身の病原性は弱いと見られるが、多くの感染症からときどき分離されることから、内因性感染に大きく関与していると思われている。
Βラクタム系抗生物質に耐性がある。

→グラム陰性桿菌
バチルス属 (genus bacillus:バチルスぞく)
胞子を持つ桿菌で、サイズの小さいものから、大きいものまで様々。
好気性もしくは通性嫌気性
34菌種が存在。ほとんどは非病原性で、遺伝子組み替えの宿主ベクター系で利用される B.subtilis や、食品の加工に利用される B.natto などがある。
炭疽菌、セレウス菌は、ヒトまたは動物に対して病原性がある。
胞子の位置は菌種に固有。大部分の菌はカタラーゼ(+)

→グラム陽性桿菌、 芽胞形成菌、 炭疽菌
百日咳菌 (Bordetella pertussis:ひゃくにちぜききん)
偏性好気性菌、発酵は行わない。

ヒトの呼吸器感染症の百日咳の起因菌、「4類-定点」感染症に分類
(1)感染初期:刺激性の咳
(2)感染中期(痙咳期):激しい咳の発作が3〜6週間続き、重症の場合は3ヶ月以上続く。
(3)感染後期(回復期):罹患後は永久免疫(終生免疫)が得られる。

百日咳菌は多数の菌体外毒素を産生する。
予防には、百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン(3種混合ワクチン)等を使用している。

→偏性好気性、 外毒素
日和見感染 (opportunistic infection:ひよりみかんせん)
免疫の働きが低下していると、健康な人では感染しないような病原性の弱い微生物に感染することがある。これを日和見感染という。
免疫能の低下は、臓器移植後などで免疫抑制剤を投与している患者や、がん患者(抗がん剤を投与、または放射線治療などによる)、免疫不全症患者などに起こる。
日和見感染を起こす病原体として、細菌としては緑膿菌、変形菌、肺炎桿菌、セラチア菌、真菌としてはクリプトコッカス、カンジダ、サイトメガロウイルス、ニューモシスチスカリニなどが挙げられる。

菌交代症在郷軍人病緑膿菌、 肺炎桿菌、セラチア菌、 クリプトコッカス、 カンジダ、 サイトメガロウイルス、ニューモシスチスカリニ、 エイズ
ビブリオ科 (Family Vibrionaceae:ビブリオ科)
グラム陰性桿菌で、ビブリオ属、アエロモナス属、プレシオモナス属、フォトバクテリウム属などの5種が含まれる。

→グラム陰性桿菌、 通性嫌気性、 コレラ菌
病原性大腸菌 (pathogenic E. coli:びょうげんせいだいちょうきん)
普通の大腸菌は、腸の中に生息していて、腸管の中にいる限りはこれといって病気を起こすことはない。しかし、大腸菌の中にも病原性が強く、下痢などの原因となるものがいる。これらのことを下痢原性大腸菌という。
下痢原性大腸菌はさらに、腸管病原性大腸菌、腸管侵入性大腸菌、腸管毒素原性大腸菌、腸管出血性大腸菌に分けられる。
腸管出血性大腸菌はウシ、ブタなどが保菌しており、外毒素であるペロ毒素を生産し、それによって下痢性の血便を引き起こす。この腸管出血性大腸菌は、ウシやブタなどの糞便に汚染された肉類や、二次汚染された食品によって人に感染すると考えられている。

大腸菌
ビルレントファージ (virulent phage:ビルレントファージ)
病原性ファージ、毒性ファージとも呼ばれる。
細菌に感染すると、自己増殖を始め、溶菌を引き起こす。

プロファージ溶菌バクテリオファージ
ビロリ歯 (Helicobacter pylori:ピロリきん)
胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因菌と見なされている菌で、ピロリ菌自身が産生する物質、もしくは感染によって胃や十二指腸から分泌される物質によって粘膜細胞に障害を起こすことが胃がんなどの原因の一つであると考えられている。
(ウレアーゼという酵素を持っていて、それによって尿素を分解してアンモニアを作るため、胃内でも生き延びられると考えられている。また、そのアンモニアによって胃壁が損傷したり、胃酸が過剰に分泌されるのではないかと思われている。)

現在では、胃がんや十二指腸がんの手術の際に抗生物質を用いてピロリ菌の除去(除菌療法)を行っていて、そのことによってガンの再発を抑えられるということが確認されている。除去は抗生物質とプロトンポンプ阻害薬の併用で、90%に有効。

ファージ変換 (phageconversion:ファージへんかん)
ファージ遺伝子が自己増殖に必要な1セットのDNAを持っているという点で不稔導入とは違う。

ジフテリアの外毒素生産能などは、そもそも無毒のジフテリア菌がファージ変換を受けたことによる。
外毒素生産のDNAはもともとファージが持っていたというところが特殊形質導入とは違う。
連鎖球菌、ブドウ球菌、ボツリヌス菌でも起こる。

ジフテリア菌不稔導入遺伝子組換え
風疹 (rubella:ふうしん)
風疹ウイルスによって起こり、三日はしかともいわれる。不快感、軽度の発熱など出た後、1〜2日で、発疹やリンパ節の腫れが現れる。発疹は、顔面から手足まで広がるが、2日ほどで治る。他に、耳の後ろや後頭部の下の方のリンパ節が腫れたり、一過性の関節炎が起こる。
特に、妊娠三ヶ月以内の妊婦が風疹にかかると、胎児にも感染し、流産や死産の原因となる。胎児への影響が軽かった場合でも、生まれてから先天性風疹症候群を起こすことがあり、先天性心疾患や視力障害、難聴、精神発達障害、発育障害などがみられる。
風疹の予防には、生ワクチンを用いる。

不稔導入 (sterile transduction (?):ふねんどうにゅう)
英語でなんて言うのか分からなかった…。
普通は、形質導入の結果、受容細胞にexogenote が入ってきて、染色体DNAに組み込まれるが、たまに組み込まれずに細胞質内に独立して存在することがある。
このDNAには自己増殖能が無く、代を重ねるごとにその遺伝子の形質を持ったものは少なくなる。
(1つの細胞が2つに分裂したとしても、その片方にしか入らない。)

形質導入ファージ変換
ブドウ球菌属 (genes staphylococcus:ブドウきゅうきんぞく)
球状でブドウの房状に不規則に配列
非運動性で、胞子、莢膜を形成しない。
健康人の皮膚や粘膜に広く分布しており、ヒトの鼻や皮膚表面の常在菌である。
コアダグラーゼ産生、マニトール分解性の病原性の強い菌種と非病原性の多数の菌種がある。
コアダグラーゼ陰性菌(CNS)の中にも日和見感染の原因となるものがいる。
33菌種が存在

通性嫌気性で、普通寒天培地で培養
10〜15%NaClを培地に添加しても発育可能である。(耐塩性菌)
選択培地としては、卵黄添加マンニット食塩培地を用いる。
血液寒天培地上で溶血を行うものがある。

ヒトに様々な化膿症を引き起こす。
毛胞炎、膿痂疹(のうかしん)、中耳炎、腎盂炎(じんうえん)、リンパ節の炎症、肺炎、敗血症など
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌による院内感染症もある。
感染症予防法では「4類−定点」感染症に分類

(1)食中毒
この菌が食物上で増殖するときに生産する耐熱性エンテロトキシンにより発症する。
エンテロトキシンは、100℃、30分間加熱でも失活しない。
催吐中枢に作用し、悪心、嘔吐、急激な吐き気、下痢などの急性胃腸炎症状を起こす。
潜伏期間は食後2〜5時間(平均3時間)

→グラム陽性球菌、 ミクロコッカス科
ブルセラ属 (genus brucella:ブルセラぞく)
グラム陰性、球桿菌、まれに単鎖状をとる。好気性の通性細胞内寄生性菌。

→通性細胞内寄生性
プラスミド (plasmid:プラスミド)
環状2本鎖DNAで、宿主の細胞内で、宿主の染色体DNAとは独立して存在しながら複製をする。
宿主の増殖には必ずしも必要なものではない。
プラスミドは核酸の中に構造遺伝以外に自己複製の開始の信号を持っているため、自己複製能がある。自己複製に必要な一群のユニットのことをレプリコン(replicon)という。

Fプラスミド(伴性遺伝子)、Rプラスミド(耐性遺伝子)、コリシンなどがある。

Fプラスミド形質導入線毛/繊毛Rプラスミド
プロトプラスト (protoplast:プロトプラスト)
グラム陽性菌を高浸透圧の溶液中、リゾチームで処理すると、細胞壁を失い細胞膜を最外層とする球状の細胞ができる。これをプロトプラストという。
この状態になると菌は、菌自身の浸透圧によって溶菌してしまう。

グラム陽性菌溶菌
プロファージ (prophage:ぷろふぁーじ)
細菌に感染し、菌体に侵入したバクテリオファージのDNAが、菌体内染色体に組み込まれたまま、存在し続けること。
テンペレートファージでないと起こらない。

テンペレートファージビルレントファージ溶原菌バクテリオファージ
ヘルペス (herpes:ヘルペス)
疱疹(ほうしん)とも呼ばれ、帯状庖疹と単純庖疹がある。
単純癌疹は、単純癌疹ウイルス(HSV、herpes simplex virus)によって起こり、角膜、口唇、陰部などに水泡ができる。このウイルスは、他にも脳炎や肝炎などの原因になることもある。

帯状癌疹は、帯状癌疹ウイルス(VZV、herpes zoster virus)によって起こり、このウイルスは、水痘(すいとう=みずぼうそう)の原因となるウィルスと同じものである。

一度、水痘にかかったことのある人が、ヘルペスウィルスに再感染する、もしくはウィルスの再活性化によって帯状疱疹を発症する(ウィルスは体内で生き残っているので)。
ウィルスの再活性化の要因として、疲労、ストレス、日光、発熱、女性では月経などが挙げられる。

帯状疱疹は知覚神経の支配領域の片側だけに発疹を作るのが特徴で、発疹は頭、顔、胸によくでき、神経痛を伴う。
現在、ヒトに感染するヘルペスウイルスには8種類ほどあるといわれている。

→帯状疱疹、 水痘
鞭毛 (flagella:べんもう)
鞭毛は、細菌細胞の表面にあり、細菌の運動器官である。
フラジェリンと呼ばれる、分子量約4万のタンパク質がらせん状に配列した中空の繊維であり、鞭毛の数、菌体への付着様式は、菌の種類によって異なる。

鞭毛基部と呼ばれる部分で細胞質膜、細胞壁に付着し、鞭毛の繊維を細胞外部に伸長している。鞭毛基部では、フックという部分でフィラメント(長い鞭毛の繊維)とつながっている。

大腸菌などのグラム陰性菌は、鞭毛基部に4つの環構造を持っている。
L ring は外膜と結合している。
P ring はペプチドグリカン層と結合している。
S ring はペリプラズマ間隙(ペリプラズミックスペース)と結合している。
M ring は細胞膜と結合している。
枯草菌などのグラム陽性菌は、鞭毛基部に、S ring と M ring のみを持つ。

リゾチームを反応させると、基部はフックについた状態でとれる。

鞭毛の運動機構走化性線毛/繊毛
鞭毛の運動機構 (Movement mechanism of flagella:べんもうのうんどうきこう)
数本存在する鞭毛が束になって、同じ速度で回転する。
鞭毛は、細胞の内外の膜電位や、pHの差で駆動を始める。

鞭毛を反時計回りに回転させて一定方向に進むことを run という。また、鞭毛を時計回りに回転させて方向を変えることを tambling という。
まず、run でしばらく進むと鞭毛が絡まってくるので、tambling で絡まったのを解くとともに、方向を変える。このように、run と tambling を繰り返して進みたい方向に進む。

走化性鞭毛
ペプチドグリカン (peptidoglycan:ペプチドグリカン)
ペプチドグリカンは、グラム陽性菌とグラム陰性菌に共通の細胞壁内層の構造である。
基本構造は、N-アセチルムラミン酸(MurNAc)とN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)がβ(1→4)結合したものが繰り返し重合したもので、N-アセチルムラミン酸の乳酸期のカルボキシル基に、筋腫によって特有のテトラペプチド鎖(4つのアミノ酸)が結合している。

ペプチドグリカンは、原核細胞のペプチドグリカンにのみ見られる特殊な糖であるムラミン酸や、真核細胞にはほとんど見られないD体のアミノ酸を多く含むなどの特徴がある。
通常は、乳酸のカルボキシル基に、(L-Ala) - (D-Glu) - (L-Amino acid) - (D-Ala) という配列を持ったテトラペプチドが結合している。

ペプチドグリカンの骨格に結合したテトラペプチド鎖は、他のテトラペプチド鎖と互いに種々の結合を作り、構造をより強固なものとしている。(架橋、かきょう、crosslinkage)
架橋構造には、大きく分けて次の4種類がある。

1,テトラペプチドの D-Ala が直接となりのテトラペプチドの3番目にある、メソ-ジアミノピメリン酸(meso-diamino pimelic acid)に結合している。
グラム陰性菌と、グラム陽性桿菌

2,テトラペプチド末端の D-Ala と他の鎖の3番目のジアミノ酸との間に、-(Gyl)5-、--(L-Ala)3-Thr-、-(L-Ala)3-、などの短いペプチドを介して結合している。
多くのグラム陽性菌、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、-(Gyl)5- 型の代表

3,テトラペプチドの末端 D-Ala と他の鎖のジアミノ酸との間に、テトラペプチドと同じものを介して結合している。
ミクロコッカス科(ブドウ球菌属など)

4,テトラペプチドの3番目が L-ホモセリン(L-homoserine、アミノ基末端を1つしか持っていない)であるため、架橋ができず、テトラペプチド末端の D-Ala と、他の鎖の2番目の D-Glu の間に、D-オルニチンを介して結合している。
ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)がその代表

グラム陽性菌グラム陰性菌
胞子/芽胞 (spore:ほうし/がほう)
植物学でいうところの、シダ植物とかの胞子とは別物。
微生物学でいうところの胞子は、内生胞子(endo spore)と、外生胞子に分類されるうちの、内生胞子の方を指す。

内生胞子は、休止細胞(resting cell)とも呼ばれ、熱、感想、化学薬品などに強い抵抗性を持つ。また、外部の栄養条件や環境条件が良くなったり、グルコースやアラニンなどの発芽誘引物質が存在すると、再び分裂と増殖を始め、栄養細胞に変化する。(発芽、はつが、germination)

内生胞子は、菌体の中央に存在する場合と、菌体の一端に存在する場合がある。また、胞子の大きさが菌体より大きい場合と、そうでないときがある。

さらに内生胞子は、その構造によって枯草菌型とセレウス菌型に分けられる。
これらはともに中心部分に芽胞核(コア)があり、ペプチドグリカンの架橋構造が少なく、内部に負の電荷があるため、分子間の反発力が大きく、その反発力によって芽胞核の内部は高度の脱水状態にある。コアの周りは、芽胞細胞膜(胞子細胞膜)、芽胞細胞壁(胞子細胞壁)、皮層(cortex)などが覆っている。
また、栄養細胞には見られない、ジピコリン酸のカルシウム塩を約10%含み、細胞壁がイオンによって中和されるのを防いでいる。

枯草菌型の胞子は、コアの周りを胞子細胞膜、胞子細胞壁(germ cell wall)、内胞子殻(内層スポアコート)、外胞子殻(外層スポアコート)が覆っている。
一方、セレウス菌型の胞子は、コアの周りを(内・外層)スポアコート、エクソスポリウムが覆っている。

放線菌属 (genus actinomyces:ほうせんきんぞく)
グラム陽性、非抗酸性菌で、菌体は糸状
健康人の口腔内に常在、まれな病気である。
治療は大量のペニシリン投与が有効、ときに外科的切除も行われる。

→グラム陽性桿菌
ボツリヌス菌 (Clostridium botulinum:ボツリヌスきん)
偏性嫌気性で、両端鈍円のグラム陽性大桿菌、周毛性のべん毛を持ち、運動性がある。偏在性の楕円形胞子を作る。非常に強力な神経毒を生産する。
1897年の食中毒流行時に、van Ermengem が原因となったハムから分離した。ヒト、家畜、水鳥、ミンクなどに中毒を起こし、土中に広く分布している。産生毒素の抗原性の違いにより、A〜G型に分類されている。

ボツリヌス中毒は3種類あり、
1.食中毒:(生体外毒素型)汚染された食品で菌の増殖と共に産生される毒素を摂取することによって発症。日本では、いずしによるE型菌によるものが多かったが、最近は激減。一方、汚染された輸入食品からA型やB型の検出報告がある。

2.乳児ボツリヌス病:離乳食として与えられた蜂蜜などの汚染による。
3.創傷ボツリヌス症:(生体内毒素型)生体内で菌が増殖、毒素により発症

ヒトから検出されるボツリヌス菌はA、B、E、F型でC、D型は鳥獣に中毒を起こすといわれてきたが、乳児ボツリヌス症でC型が検出されている。

A,B型の胞子は耐熱性が強く、100℃で3時間、または120℃で4分間耐える。
E型の胞子は耐熱性が弱く、90℃で5分または、80℃で20〜30分の加熱で死滅する。いずれにしても耐熱性なので、食品中では少々の加熱では胞子は死滅しない。

毒素は分子量15万の神経毒と無毒成分が非共有結合し、分子量50万、90万の複合体で存在する(プロジェニタートキシン)まず、無毒成分に保護されて胃を通り、小腸で吸収される。リンパ管内で解離し、血中に入った神経毒が神経-筋接合部や自律神経に接合してアセチルコリンの分泌を抑制し、中毒症状が現れる。
B、E、F型のプロジェニタートキシンはトリプシンなどにより亀裂が入り開裂し、毒性が数百倍に上昇する。活性化毒素の毒性は既知の毒素の内では最も強い。

摂取量の違いにより、潜伏期は数時間から3日ぐらいだが、平均12〜24時間
めまいや頭痛を伴う全身倦怠感の後、口腔咽頭の乾燥感、複視等の視覚障害、瞳孔散大、眼瞼下垂、発語障害、嚥下障害、呼吸困難などの麻痺症状が現れ、死に至る。致命率は25%以上

毒素が神経系作用部位に不可逆的に結合するため、発症後の治療は困難。中毒が疑われる早期に抗毒素による血清療法を行う。そして、死亡の原因となる症状に対する対症療法を行う。抗生物質の投与は行わない。
予防としては、危険性のある場合には節食前に十分加熱処理を行うこと。

クロストリジウム属、 グラム陽性桿菌、 芽胞形成菌、 偏性嫌気性、 外毒素
ボルチン顆粒 (voltin granule:ボルチンかりゅう)
異染小体の項を参照
恐らくは、異染小体と同じものだと考えられている。

異染小体

[ま]

マイコバクテリア (Mycobacteria:マイコバクテリア)

ミコバクテリアとも読む。
グラム陽性、無芽胞、好気性の桿菌で、べん毛、莢膜を持たない。
細胞壁中にミコール酸(mycolic acid)を含む多量の脂肪酸を持つため、各種の塩基性色素に染色されにくいが、一度染まると酸によって脱色されない抗酸性の性質を示す。

培養基での発育状況の違いにより分類する
遅発育菌群:集落(コロニー)ができるまで7日以上かかる。
迅速発育菌群:同条件で7日以内、25℃、37℃で発育可能
特殊な栄養を要求する
人工培地増殖不能:結核菌、ライ菌など

→グラム陽性桿菌、 好気性、 結核菌ライ菌
マイコプラズマ (Mycoplasma:マイコプラズマ)
細胞壁を持たず、ペプチドグリカンや、その前駆体を合成できない。ペニシリン系は効かないが、圧力(osmotic shok)や界面活性剤、アルコールなどで溶解する。
M.pneumoniae はヒトに原発性異型肺炎を起こし、咽頭分泌物がヒトからヒトへ飛沫感染する。家族内感染も起こる。「4類-定点」

STDマイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ肺炎 (mycoplasma pneumonia:マイコプラズマはいえん)
原発性異型肺炎とも呼ばれる。
マイコプラズマという微生物(多形性で細菌よりも小さい)によって引き起こされる肺炎のことで、マイコプラズマの一種の肺炎マイコプラズマが原因となって起こる。
幼児など比較的年齢の若い人がかかることが多い。全ての肺炎のうちの20〜30%を占め、20〜30歳代での肺炎の中では最も多い。
急性期では、激しい咳、結膜の充血、頭痛、発熱などの症状があり、頑固な咳が特徴である。テトラサイクリン、エリスロマイシンなどの抗生物質がよく効き、予後は良好。

マイコプラズマ
ミクロコッカス科 (family micrococcaceae:ミクロコッカス科)
グラム陽性球菌で、ブドウ球菌属などが含まれる。

→グラム陽性球菌、 腸球菌属ブドウ球菌属連鎖球菌属肺炎球菌

[や]

輸入感染症 (afferent infection disease:ゆにゅうかんせんしょう)

海外で流行している感染症が、旅行者や輸入食品等によって持ち込まれたもの。
旅行者感染症の赤痢、コレラ、チフス、毒素原性大腸菌感染症などがあるが、下痢を起こす旅行者下痢症の原因はウイルス、原虫、寄生虫など様々で複数の微生物感染によるものも多い。熱帯性熱病のラッサ熱やエボラ出血熟、マールブルグ病などの国際伝染病も含まれる。
輸入感染症は航空機などの発達によって危険が増してきているので、十分な検疫体制が必要である。

→赤痢、 コレラ、 チフス、 毒素原性大腸菌感染症
溶菌 (bacteriolysis:ようきん)
細菌が破裂して、内容物が遊離すること。
抗生物質やファージなど、様々な原因によって起こる。
溶菌を引き起こす免疫学的物質としては、リゾチームなどがある。

プロトプラスト、 リゾチーム、 ビルレントファージ溶原菌スフェロプラストバクテリオファージ
溶原化 (lysogenization:ようげんか)
テンペレートファージが感受性菌に感染したときに、ファージ核酸が細菌の染色体の一定部位に組み込まれること。

テンペレートファージバクテリオファージ
溶原菌 (lysogenic bacteria:ようげんきん)
プロファージを持ち、溶原化した状態の細菌のこと。
プロファージは一般に、菌の分裂とともに複製されているが、低い頻度で自然に活性化されるか、誘発源によって活性化され、再び増殖型ファージとなって、溶菌を起こすこともある。

溶菌テンペレートファージプロファージ

[ら]

ライ菌 (Mycobacterium leprae:ライきん)

結核菌によく似た形の抗酸菌
1879年にノルウェーのHansenによって発見
人工培養はまだ成功していないが、アルマジロやヌードマウスで菌を増殖させることができる。

感染力は弱く、家族内感染が多いが、親子間での感染が多く、夫婦間感染はほとんどない。潜伏期は平均3〜6年。
病型は
ライ腫型(結節、L型)、類結核型(非結節型、T型)、両者の境界群(B群)、病初期のため特長が明らかでない未分化群(I群)がある。
ライ結節から調製した抗原液を皮内に注射して反応を調べる光田レプロミン反応がある。

ライ菌は神経に親和性があり、知覚麻痺の症状が必ず伴う特長がある。
化学療法剤が有効だが、手や顔の変形には外科的な治療が必要。

マイコバクテリア、 グラム陽性桿菌、 好気性、 ハンセン病
ライム病 (Lyme disease:ライムびょう)
ボレリア・ブルドルフェリイというスピロヘータの一種によって起こる感染症で、マダニが媒介する。これに感染しているマダニがヒトを刺すことによって感染し、症状は皮膚の紅斑、頭痛、さむけ、発熱、倦怠感、リンパ節腫脹、髄膜炎、神経系や循環器系の障害、関節炎などで、関東より北の地域に発生するのが特徴。

ラッサ熱 (Lassa fever:ラッサねつ)
アフリカのナイジェリアのラッサ村に発生した地方病で、国際伝染病の一つ。
症状は高熱、口内の潰瘍、筋肉痛、皮膚発疹、肺炎、心臓障害、腎障害などで、1986年に日本にも感染者が現れたが、発病はしなかった。

リステリア菌 (Listeria monocytogenes:リステリアきん)
グラム陽性の短桿菌、通性嫌気性だが、嫌気性の方がよく発育。
1〜45℃の間で発育可能。20〜25℃で培養すると運動性を示す。血液寒天培地上でよく発育し、β溶血性、食塩耐性があり、6〜8% NaCl含有培地でも発育できる。通性細胞内寄生せいで、マクロファージ内で増殖する。
哺乳動物の腸管、自然界に広く分布。

ヒトを含む哺乳動物、鳥類のも感染する人畜共通感染症リスレリア症の起因菌。感染すると末梢血中の単核球の増加が起こるが、ヒトでは起こらないこともある。ヒトでは髄膜炎、髄膜脳炎、敗血症。その他、流産の原因となったり、妊婦の子宮内感染では胎児敗血症、新生児の死亡の原因となる。日本では患者の2/3が5歳以下。
ステロイド剤や免疫抑制剤の使用は本症(日和見感染)を誘発する。

欧米を中心に食品を介した集団発生がしばしば報告されている。
致死率が高く、妊婦(新生児)、高齢者、免疫機能の低下したヒトなどは特に感受性が高い。生肉、生乳、乳製品、魚介類、野菜類などと調理済み食品に広く分布している。
グラム陽性無芽胞不規則性桿菌
多形性、(柵状、松葉状)棍棒状桿菌、菌体内にポリメタリン酸を主成分とする異染小体を持つ。非運動性だが、細胞内に単鎖のミコール酸を持つ。好気性または通性嫌気性。自然界に広く分布、植物病原菌種も多数含まれている。
ヒトでは気道や粘膜などに常在している。

→グラム陽性桿菌
リポ多糖 (lipopolysaccharide:リポたとう)
LPSと略されることもある。
リポ多糖はグラム陰性菌の細胞壁外層構成成分であり、O特異多糖(O-抗原)、コア多糖、lipid A(リピドA)の3つの基本構造から成る。
リポ多糖は、親水性部分と疎水性部分から成り立っていて、外膜と結合している。また、リポ多糖は内毒素であり、動物の体内で発熱や白血球減少、低血圧、ショックなどの作用を示す。(内毒素の活性中心は、リピドA)

構造的には、ヘプトース、リン酸、エタノールアミンなどからできた骨格に lipid A がKDO(2-ケト-3-デオキシオクトン酸)を介して結合し、さらにグルコースやガラクトースなどを含む少糖の鎖が続く構造を芯(R core)として、その先端に、O-抗原特有の少糖でできたサブユニットが繰り返し結合してできた O-抗原側鎖がついている。

グラム陰性菌O抗原lipid ALPSグラム陰性菌の細胞壁内毒素コア多糖
緑膿菌 (Pseudomonas aeruginosa:りょくのうきん)
小桿菌で、自然界に広く存在する。ヒトの皮膚や腸管にも存在する。
緑色膿を伴った化膿巣を作る。

ヒトに対する病原性は強くないが、混合感染、二次感染の起因菌として重要。
院内感染症の起因菌の一つである。
多くの外毒素を産生する。プロテアーゼ、エラスターゼ、エラ毒素A(ジフテリア毒素と同じ作用機作で、蛋白合成を阻害する)
また、グラム陰性菌特有の内毒素(LPS)も持つ。

シュードモナス属、 グラム陰性桿菌、 偏性好気性、 外毒素日和見感染
淋菌 (Neisseria gonorrhoeae:りんきん)
腎形またはそら豆状の球菌が向かい合った双球菌
血清添加GC培地で、3〜5%CO2ガス存在下、高湿度で培養すると24〜48時間後、透明でつやのある小露状(ロット状)のコロニーを形成する。
温度、消毒薬、乾燥などに弱い。

STD(性行為感染症)であり、「四類−定点」感染症に分類
ヒトにのみ病原性を示す。感染源は患者の粘膜からの侵出物。性交による直接接触感染が主で、潜伏期間は2〜14日、排膿を伴う前部尿道炎で発症する。泌尿生殖器感染と性器外感染とに分けられる。男性では尿道炎、前立腺炎、副睾丸炎、女性では尿道炎は軽く、腟炎、卵管炎、子宮内膜炎などになり、不妊の原因となることがある。
性器外感染は、関節炎、心内膜炎などだが、淋菌性眼炎は失明の危険を伴うので、感染産道を通過する際の膿漏眼を防ぐために出産時、新生児に1%硝酸銀液の点眼(クレーデ法)やペニシリン、アクロマイシンの点眼が行われる。
小児院内腟炎は公衆浴場や膿の付着したもの(シーツ、座布団など)に接触することによる間接感染が原因となる。(数は少ない)

ペニシリン耐性淋菌(PPNG)が出現している。

→グラム陰性球菌、 好気性、 STD、 STDナイセリア属
レジオネラ (legionella:レジオネラ)
在郷軍人病の項を参照

在郷軍人病
連鎖球菌属 (genus Streptococcus:れんさきゅうきんぞく)
直径2μm以下の球状または楕円形、2連もしくは直鎖状
非運動性、無芽胞、だいたいは通性嫌気性
血液寒天培地上のコロニーの性状によって、
化膿菌群 β−溶血性を示す
緑レン菌 α−溶血性を示す
非溶血性菌群
の3つに大別される。

α溶血:コロニーのまわりに緑色の溶血環を作る。(メトロヘモグロビンの形成によって緑)
β溶血:コロニーのまわりにはっきりした透明の溶血環を作る。

→グラム陽性球菌、 ミクロコッカス科